サッカー2020年夏の移籍、久保建英を含む推定市場価格トップ5名

2020Summer-Transfer コラム

世界中のサッカー選手の推定市場価格を発表している「transfermarkt(トランスファー・マルクト)」。日本のJリーグに所属する選手に関しては、過去の欧州リーグでの活躍歴なども反映されていて、純粋に現時点のJリーグでの活躍とは若干相違を感じる点もあるものの、欧州のスカウトから見た視点と捉えると、微妙な差異すら興味深く感じる。その情報量と網羅性は圧巻であり、見ているだけでも面白いサイトである。

今回のコラムでは、推定市場価格を基準とした、日本人サッカー選手のトップ5名の移籍情報について、詳細にまとめる。

1位 久保建英(くぼ たけふさ) 2001年6月4日(19才)

『 ビジャレアルCF(スペイン) 』にレンタル移籍決定!

昨季は、スペイン1部のマジョルカで孤軍奮闘した久保建英。マジョルカは、前年の昇格プレーオフで2部5位の順位から昇格したこともあり、シーズン前の予想通り、シーズンを通して降格争いとなった。

シーズン前のキャンプ期間中は、レンタル元のレアルマドリードに在籍していたため、マジョルカへの合流は遅れた。序盤は、チームの主力ではなく、徐々に出場時間を伸ばしていき、中盤に差し掛かる頃にはレギュラーに定着。コロナ禍によるリーグ中断明け以降は、チームを率いるエースとして君臨した。

レンタル移籍として、マジョルカへ加わった久保建英だが、ラ・リーガ(スペイン1部)での試合経験はなく、デビューシーズンだった。試合を重ねるたびに、メキメキと頭角を現し、最終的にマジョルカは、10代の若者の才覚に全てを頼ることになる。

コミュニケーションはともかくとして、久保建英とチームメイトの間には、クオリティ面で乖離のあったことは確かである。プレービジョンを共有してもらえず、久保の欲しいタイミングでの、パスのリターンは無い環境であった。守備に追われる時間も長く、自身の特徴を発揮しにくい、歯がゆいシーズンともいえる。

ただし、自身の特徴にマッチしていないチームスタイルでも、単独のドリブル突破で、崩す姿は異色の出来だった。ある意味、久保建英のポテンシャルの高さを垣間見せたシーズンともいえる。シーズンを通して、ハイライトとなる試合は幾つもあったが、アトレティコ戦のプレーは圧巻の一言に尽きる。アトレティコは、欧州でも強豪チームであり、守備陣も固い。そこを相手に、自由奔放に崩していく姿は、デビューシーズンの若者とは思えない活躍だった。

久保の奮闘むなしく、残念ながら、所属していたマジョルカは降格してしまう。しかし、10代のレンタル選手に頼ならければ、攻撃の糸口が見つからないほどのチーム事情である。むしろ、現地での久保建英の評価は高くなった。

もしも、の仮定になるが、久保建英のいないマジョルカでは、決定機が激減するため、終盤まで残留争いをせずに、早々に降格が決定していただろう。

シーズン終了後、久保建英は、世界の名だたるクラブから争奪戦となる。レアルマドリードは、完全移籍を求めるオファーを認めず、次のレンタル先として、ラ・リーガ5位でEL出場権のあるビジャレアルを選択した。

現地のファン(ここ1年間の新規ファン)は、久保建英について、ドリブルの得意な選手として、イメージを定着させているが、正確には、ドリブル「も」できる選手であり、本来は、視野の広さを含めた、判断の早さと正確さをウリとする選手である。

向き不向きでいえば、ビジャレアルは、昨季のマジョルカよりも、明らかに向いている。チーム全体のプレースタイルとして、ボールを保持するばかりか、個々の選手の質も高い。プレービジョンを共有して、リンクできる選手は確実に増える。本来の久保建英の特徴を踏まえれば、マジョルカ時代よりも輝きを増すだろう。

しかも、ビジャレアルの今季の陣容は、机上では上位を狙える戦力を揃えている。現地でも久保建英に大きな期待を抱いている。レンタル元のレアルマドリードは、世界最高峰のビッククラブである。そこで主軸を担うなら、リーガで突出した結果が必要になる。いわゆる、目に見える数字である。得点とアシストをどこまで伸ばせるか、サッカーの世界では、ちょっとしたツキで運命が変わる。

実力に関しては、まったく心配していないが、あえて、正直な感想を述べる。

サッカーファンとして、久保建英のシンデレラストーリーを見たいのである。ファンとして、日本の地から、彼の幸運を祈っている。

2位 中島翔哉(なかじま しょうや) 1994年8月23日(26才)

現所属『 FCポルト(ポルトガル) 』

昨季は、ポルトガルの名門クラブである、FCポルトに加入した。FCポルトは過去にチャンピオンズリーグを制覇したことのある、欧州でも強豪クラブである。

昨季の中島翔哉は、波乱のシーズンだった。特に、コロナ禍によるシーズン中断以降は、(家族の健康問題もあって)チーム合流を拒否していて、優勝セレモニーにも参加していない。

経緯については、当事者でなければ、正確な情報はつかめない。
しかし、現地のマスメディアにとっては格好の題材で、クラブとの不仲説など、憶測を交えた言葉が取り沙汰された。

中島翔哉に関しては、コロナ禍で、情報が錯そうしている面もある。まず、移籍に関して、クラブが放出するか(正確には放出を認めるか)すら不透明である。元々、クラブ側は中島翔哉に大きな期待を寄せていた。契約年数は5年で、背番号10である。

今シーズンを開始するにあたり、お互いに話し合う場を設けて、すでにクラブとの確執は無いとする報道も出ている。異国の地ということで、どうしても現地の情報は伝わり難く、日本のサッカーファンとしては、去就を心配している人もいるだろう。

サッカー選手の移籍とは、唐突に起きることも多いので予断を許さないが、今のところ、FCポルトに所属したままシーズンをスタートさせるようだ。FCポルトは、チャンピオンズリーグ出場権も獲得しており、このクラブからステップアップとなると、ポルトガル国内には存在しない。移籍金の額を考慮すると、ポルトガル国外のチームでも、裕福なクラブでなければ獲得できないだろう。

サッカーファンとして、今季の巻き返しを期待している。

3位 冨安健洋(とみやす たけひろ) 1998年11月5日(21才)

現所属『ボローニャFC(イタリア)』

昨季は、イタリア・セリエAのデビューシーズンで、現地では大きな評価を得た。本職のセンターバックではなく、右サイドバックでの起用となったが、逆にポテンシャルの高さを見せつける形となった。特徴であるエレガントな守備はもちろんのこと、足の速さや、アップダウンの運動量に加えて、身長188cmの右サイドバックとなると、海外でも貴重な人材となる。

加えて、本職はセンターバックである。スカウトの目に止まるのは、必然とも言える。

移籍に関して噂されているのは、主にイタリア国内の上位クラブである。匿名(飛ばし)を含めるなら、ユベントス・インテル・ミラン・ローマ・ナポリの名前が出ている。ビッククラブの傾向としては、単年度ではなく2年間以上、継続して活躍している選手を取ることが多い。そういった意味では、昨季以上の活躍を求められるが、ファン視線で見ると、今季の活躍を心配する人は皆無だろう。怖いのは怪我ぐらいとも言える。

年齢を考慮すると、これほどエレガントな守備のできるセンターバックは、歴代の日本代表でも珍しい。冨安健洋は、まだ21才である。順調に経験を重ねれば、おそらく、歴代最高のセンターバックになるだろう。

ボローニャは、立ち位置的に、引き抜かれる側のクラブである。冨安健洋の実力を鑑みるに、遅かれ早かれステップアップする。今季か、どうかはともかくとして、ファンとしては、吉報を楽しみに待ちたい。

4位 鎌田大地(かまだ だいち) 1996年8月5日(24才)

現所属『アイントラハト・フランクフルト(ドイツ)』

昨季は、ELでアーセナル相手に2得点、ザルツブルク相手に、ハットトリックを記録するなど、フランクフルトで活躍した鎌田大地。その前年にはベルギーのシント=トロイデンVVで、36試合16ゴール9アシスト。

余談になるが、アーセナルは成績不振を理由に、エメリ監督を解任した。ELのフランクフルト戦(鎌田大地の2ゴールで逆転)が引き金になったと報じられる。正確には、フランクフルト戦の敗戦により、公式戦7試合連続未勝利となり、イングランドの名門クラブであるアーセナルとしては、27年ぶりという不名誉な記録になったからである。

解任されたエメリ監督は、今季はスペインのビジャレアルを率いることになる。久保建英の所属先である。こう書くと不安になる人もいるかも知れないが、実はエメリ監督は、非常に優秀な監督である。スペインのセビージャFCを率いて、EL3年連続優勝の実績を誇る。実績を買われて、パリサンジェルマン、アーセナルと、他国リーグのビッククラブを指揮するものの、当初期待されたほどの成績は残せなかった。母国スペインであれば、監督として一番大事なコミュニケーションの不安は無い。むしろ、本来の実力を発揮できる環境なので、現地の期待は非常に高い。

話を、鎌田大地に戻す。現時点では、鎌田大地の去就は定まっていない。フランクフルト側は契約延長を望んでいるのだが、サインはまだしていない。契約の都合上、今年の夏であれば、移籍金を取れるが、来夏となるとフリー移籍となる。

ここ2年の活躍を加味すると、ステップアップも十分に望める成績のため、水面下で激しい交渉になっているのは、誰しもが予想するところだろう。証左として、クラブ側からの延長交渉自体は、かなり前から報じられていた。しかし、いまだに進展がない。

どのような決着になるのかは、現時点では不透明である。

追記 フランクフルトとの契約を2023年まで延長!

契約延長の鎌田大地、自身の将来にも言及

「オファーというか、代理人の元には『世間的に見ればステップアップだろう』と言われるクラブからの話もありました。けど正直、“フランクフルト以上のチーム”を探そうと思っても、ドイツでも本当に少ないと思うし、僕個人も小さなステップアップは必要じゃないと自分の中で考えていました」

参考記事 yahoo news【SOCCERKING】(約1300文字)

5位 南野拓実(みなみの たくみ) 1995年1月16日(25才)

現所属『リヴァプールFC(イングランド)』

2020年1月1日、リバプールというビッククラブへ到達した。リバプールは、前年の2018-19シーズンのチャンピオンズリーグ優勝クラブである。昨季は、すでに完成されているチームへ、冬に加入するという、難しい立ち位置からの挑戦となった。すでにデビューは済ませているものの、キャンプから参加という意味では、今季からスタートと言い換えてもよい。今季は勝負の年でもある。このクラスのクラブになると、レギュラー争いも熾烈であり、まずは生き残ることが求められる。

個人的には、マンチェスターユナイテッド戦に先発出場して、ゴールを決めてもらいたい。Jリーグのセレッソ大阪時代に、親善試合でゴールを決めているのだが、海外メディアに彼のキャリアのハイライトとなるゴール、みたいな報じられ方をした。このときの、海外メディアのニュアンスとして、無名の選手としては一生の思い出になって良かったね。といった様子であった。

当時の南野拓実は10代であり、将来の日本代表候補である。伸びしろは無限大だったのにも関わず、個人はもちろんのこと、Jリーグ全体を軽んじる不当な評価を下された。

よく考えてみて欲しい、シーズン前のクラブ間のフレンドリーマッチのゴールです。公式戦ですらないゴールが、これから、羽ばたこうとしてる若者の、キャリアのハイライトになるなんて、失礼にもほどがある。
(正確には、親善試合のゴールも、ゴールです!なので、本人から出た発言ならば尊重します。でも、このときは、南野選手個人に対するリスペクトを感じませんでした。メディアである以上、リスペクトというか、サッカーに対する愛情が見えない報道は、控えてほしいです。)

南野選手に関しては、現時点でも、当時のゴールを越えるハイライトは幾つもあります。(さすが南野選手です!)ある意味、すでにリベンジは達成している状態ですが、スカッとしたいので、南野選手には、ぜひゴールを決めてもらいたいです。

あえていえば、マンチェスターユナイテッドは、あの時の高みに居て欲しかったのですが、長期政権のファーガソン監督が優秀過ぎたのでしょう。往年のファンからすれば、今のマンチェスターユナイテッドの姿は辛いものがあります。好敵手は、強くなければ面白くないですから。なんとか盛り返して欲しいものです。

なお、南野選手に関しては、この夏に移籍の話が持ち上がる可能性は、ほぼ無いです。移籍して半年、いわば新加入に近い状態ですから。