南米の強豪アルゼンチン、そのサッカースタイルを日本に導入しよう

Argentina-Football コラム

まずは大喜利

司会:「私は『そうそう』と返しますので、アルゼンチン代表のメッシについて、ボケてください。」

座布団1:「愛媛です。」
司会:「そうそう。」
座布団1:「エヒメッシ。」
パチパチパチ~。

座布団2:「横浜です。」
司会:「そうそう。」
座布団2:「カモメッシ。」
パチパチパチ~。

座布団3:「札幌です。」
司会:「そうそう。」
座布団3:「タイメッシ。」
パチパチパチ~。

座布団1:「峠の弁当です。」
司会:「そうそう。」
座布団1:「釜メッシ。」
パチパチパチ~。

座布団2:「釜メッシって、峠の釜めし(駅弁当)でしょ?食べ物でしょ?」
座布団1:「ですよね~。」
座布団3:「それでいいなら、はい!」
司会:「どうぞ。」

座布団3:「男の料理です!」
全員:『焼きメッシ。』
座布団3:「先に答えないでくださいよ~。泣きますよ。」
司会:「どうぞ。」
座布団3:「メシメシ泣きますよ!あ、メソメソでした。」
パチパチパチ~。

筆者:「冒頭の大喜利、無駄に長くて、記事を読んでもらえないかも。」
司会:「涙が出ますね。」
座布団3:「メシメシしないでください!あ、メソメソでした。」
パチパチパチ~。

アルゼンチンのサッカーについて

マラドーナやメッシといった、世界最高峰のスター選手を輩出してきた、南米のサッカー大国です。国内リーグのレベルも高く、南米のクラブナンバーワンを決めるコパ・リベルタドーレスでも、国別最多優勝はアルゼンチンです。

アルゼンチンサッカーの特徴

南米大陸の強豪国といえば、ブラジルとアルゼンチンの双璧ですが、国境を接する隣どうしの国なのに、そのスタイルは大きく異なります。選手個人の持つ、リズム感が違うからです。ブラジルは魅せる足技で、トリッキーで幻惑するようなドリブルです。ボディフェイントもブラジルらしさが漂います。一方のアルゼンチンは、ボールに対して、細かいタッチをしながら、するすると抜けていくドリブルが特徴です。

育成年代における環境の違い、ひいては、両国のサッカー文化の違いといっても良いでしょう。例えば、アルゼンチンでは、バビーフットボールがあります。フットサルよりさらに狭いコートで、かつ人数を増やして行う競技です。スライディングなども許可されており、フットサルよりもサッカーのルールに近いです。

バビーフットボールに限った話ではありませんが、狭いコートで人数が密集していれば、細かいタッチのドリブルで、相手を抜く技術が求められます。かわしても次、かわしても次と、続くのですから、自然と無駄を削ぎ落したスタイルとなっていきます。

さきほど、ブラジルとアルゼンチンのサッカースタイルは、大きく異なると述べましたが、正確には、大きく異なるような印象を受けます。実は、ベースとなる特徴は、組織重視のヨーロッパスタイルではなく、個人技重視の南米スタイルで、両国ともボールを支配する強者のサッカーです。似ている・似ていないの2択なら、似ているハズなのです。違うのは、選手個人のリズム感になります。

ボールを保持している個人のリズム感だけで、これほど印象を変えられる。サッカーとは面白いスポーツです。

日本にサッカースタイルを持ち込むなら

もし、日本の育成年代に、ブラジルとアルゼンチンのどちらの、スタイルを持ち込むのが良いか、と2択で問われたら、アルゼンチンをおすすめします。

妙な例えになりますが、ブラジルのスタイルを導入する場合、全国の子供達が、練習試合でのゴール後のパフォーマンスとして、サンバを踊るのに似ています。もちろん、現在のブラジルの子供達が、全員サンバを踊っているわけではありません。しかし、サッカーのリズム感としては、全員が踊れる環境になっています。日本人の気質として、サンバのリズム感を浸透させるのは、少々無理があります。

分かりやすく例えてみます。

日本とブラジルに、ビーチがありました。照りつける太陽と白い砂浜です。両国の人々は、ビーチバレーをして遊びます。得点するごとに、日本ではハイタッチ。ブラジルでは、陽気にサンバを踊ります。もちろん、全員が全員ではありません。しかし、双方の風景として想像できます。

日本では、遊びのゲームで得点しても、サンバを踊ったりはしません。

サッカーでは国民の気質に沿ったリズム感は、必ず表に現れて顕在化します。ブラジルではサンバ、日本ではハイタッチです。では、日本のサッカーに、それらはどう還元されているか? 答えは『和』です。

日本の特徴はチームワークになります。ピッチ上で常にさぼらず、攻守のどちらでも、チームとして数的優位を重視します。攻撃するときは、ムダ走りになってもパスコースを増やす動きが推奨されます。逆に守備では、前線のFWでも献身性を求められます。良い悪いではなく、あらゆる場面で、手を抜かないのが日本の特徴です。

話を戻しましょう。

もし、あえて日本にブラジル流を持ち込むとしたら、特定のサッカースクールで、個性の溢れる選手を育てる場合です。子供がもし、教えてもいないのに、足技で魅せるプレーが多いのであれば、学ぶ価値は高いといえます。サッカーの才能は、ほぼ天性のもので、どう磨くかの違いしかありません。プロになる選手は、子供の頃からズバ抜けて上手いです。

育成世代について、どのような指導が良いか、という正解は存在しません。ヒントになるのは、どのような選手になれそうか、です。強豪国の代表選手というのは、その国のサッカーの伝統を踏襲しています。もし指導方法として、他国の流儀を持ち込むサッカースクールを選択するのであれば、子供の個性に合っているかを重視してください。

ブラジルよりも、アルゼンチンをおすすめする理由

一方、アルゼンチン流を日本の育成世代に持ち込む場合です。ブラジル流よりもおすすめする理由は、日本のサッカースタイルに向いているからです。

狭いコートで人数を増やした練習環境では、攻守の切り替えが早くなります。ショートパスのパスサッカーを主体としている日本には、向いています。

もし、全員の判断が早ければ、敵にパスカットされたとき、味方選手との距離感は近いので、素早く相手を囲めます。組織として守りつつ、ボールを奪い返します。もちろん、アルゼンチンでは南米らしく個人技も重視しているので、当然のごとく、1対1の激しさを求めます。

アルゼンチンのサッカースタイルは、今の日本の強みを活かしつつ、欠けている部分を補えます。大袈裟にいえば、欠けているピースが、ピタリとはまります。

狭くて人数の密集した練習環境で、ドリブル突破を図るには、細かいタッチが必要になります。「無駄を削ぎ落したドリブル」のスタイルです。この技術が身に付けば、日本のショートパス主体のサッカーに、大きな彩りを加えます。特に活きるのは、相手にゴール前を固められたときです。

日本はパワープレイが苦手です。というよりも、どのカテゴリーでもストロングポイントではありません。クラブや年代別であれば、たまたま高身長の選手が揃っている場合もありますが、レアケースです。本気でストロングポイントにするには、他国を上回る選手層が必要です。その点、日本人の平均身長を伸ばすことは難しくても、ドリブルで勝負する選手を増やすことは、不可能ではありません。

正確には、今の育成環境のまま、自然とドリブルで勝負できる人材を増やすことが重要です。

アルゼンチン流を導入しても、日本では別の進化を遂げる可能性が高い

育成年代に、アルゼンチン流の手法を導入しても、日本ではアルゼンチンのスタイルにはなりません。最大の理由は、練習に対する取り組み方です。日本では、サッカーはあくまでスポーツです。子供達の練習風景として、激しいタックルやスライディングをさせたり、まして、相手選手を削る行為は戒めの対象となります。

もちろん、アルゼンチンでもスポーツですが、激しさや荒さという面では、だいぶ様相が異なります。許容できる激しさの基準が違うからです。

なので、日本に導入しても、アルゼンチンばりの、球際の強さを習得するのは難しいです。その代わり、密集地帯での組織的な守備は、大きく伸びる公算が高いです。良くも悪くも、日本はクリーンなサッカーをします。素早く相手を囲い込み、スマートにボールを奪取する方向に進化していくでしょう。

アルゼンチンの国内リーグ運営について

アルゼンチンの国内リーグは、頻繁にレギュレーションが変わってきました。良くいえば柔軟で、悪くいえば行き当たりばったり、です。

歴史的には、リーグを前期と後期の2つに分けて戦うレギュレーションが多かったです。多かったというのは、地域ごとにリーグ戦をしてみたり、1年を通して単一リーグにしてみたり。年度によっては、リーグ戦を予選と見なして、カップ戦を混ぜ込みました。

このぐらいであれば、Jリーグでもあったのですが、アルゼンチンは一味違います。リーグタイトルのトーナメントを開催したものの、人気チームが決勝で負けた!ので、翌年にレギュレーションを変更します。実際、1年前までのタイトルマッチを、突然スーパーカップに変更して、リーグ優勝のタイトルとは別にしたこともあります。

日本でも、似たような出来事あった気がするという、アナタ!(間違いではありません!)確かに、Jリーグでもレギュレーションは変遷しています。ですが、アルゼンチンは比較になりません。日本とは異なる、その斜め上の凄さをお伝えします。

【斜め上】リーグ戦の降格は、平均勝ち点【その1】

《人気チームが降格しそうになって、1年間のリーグの勝ち点ではなく、慌てて過去3年間のリーグの平均勝ち点を採用する。》

1年ごとに昇格・降格があるのにも、かかわらず、唐突に過去3年間の平均勝ち点を採用です!さすがアルゼンチンです。何がすごいって、昇格してきたチームは、過去3年のうち2年間が存在しないので、同じカテゴリーなのに、指標となる期間が違います。年度をまたぐので、対戦相手の組み合わせも違います。公平性が担保されていません。

【斜め上】翌年、参加チーム数が50%も増えた!【その2】

1部リーグのチーム数を増やしました。20チームから30チームへ50%増量。驚きの増加率です。もちろん弊害は大きくて、慌てて翌年から、チーム数を減らしていきます。予想通りの、アチャ~という感じです。が、建前としては計画通りです。

「ええー!計画通りとは、とても信じられない。」とか、「実施する前から、この計画は無謀だよね。」といった意見はナンセンスです。「アルゼンチンらしい、カオスだ。」と納得する。これが、真のサッカーファンの姿勢です。

斜め上まではいなかい、アルゼンチンのトリビア

歴史を振り返ってみると、アルゼンチンは先進国から陥落した、珍しい国です。国家としてデフォルト(財政破綻)も経験しています。

こう書くと、まるで計画性が無いように思えますが、そうでもありません。

個別の案件で見てみると、計画性が皆無なのか、チャレンジ精神に溢れていて、たまたま失敗しているのか、判断し難いところもあります。例えば、ビットコインなどの仮想通貨が流行ったときに、アルゼンチンのサッカー協会は、いち早く、仮想通貨を発行しました。日本でいえば、日本サッカー協会の発行する仮想通貨です。もちろん、日本サッカー協会は、まだ手掛けていません。(おそらく、議題にも上がっていません。)

仮想通貨に関しては、サッカー界でも他にも手を挙げているところがあるので、なんとも言えませんが、発行元としてアルゼンチンサッカー協会が絡んでいる、コインとなると、うーん、どうなんでしょう。

あとは、バニシング・スプレーです。サッカーの試合で、フリーキックするときに壁の位置を示す、芝生に吹き付けるスプレーです。(元祖を巡って諸説ありますが)一応、商用目的ではアルゼンチンの発明家となっています。

斜め上とは言わせない!アルゼンチンリーグの実態について

アルゼンチンのリーグ運営に関しては、日本人の感覚では、理解し難い部分もあるのは確かです。

あえて、フォローする発言をするならば、国民全員がサッカーを深く愛するがゆえに、サッカー界の政治的な駆け引きに、情状酌量の余地が入るでしょう。なにせ、1人のサッカー選手にしか過ぎない、元スター選手のマラドーナが、マラドーナ教の神様として、本人の知らぬ間に宗教として祀り上げられるような、お国柄です。

つらつらと書いてきましたが、アルゼンチンリーグの実態について、まとめます。

アルゼンチンのリーグ運営は、カオスが特徴です。ただし、ドラクエでいう『パルプンテの呪文』で、マラドーナやメッシが誕生したわけでは、ありません。スターの誕生する土壌があります。

まずリーグの特徴として、南米のスペイン語圏の選手達が集まってきます。隣国ブラジルはポルトガル語ですが、南米大陸全体としては、ほぼスペイン語です。周辺国からすれば、言葉が通じる上に自国リーグと比較してレベルが高いです。自然と南米大陸の有力選手の集積地になります。

有力選手が集まれば、当然、レベルも上昇します。位置付けとして、アルゼンチンのトップリーグは、欧州のスカウト達の見本市です。

キャリアを始めたばかりのプロ選手としては、成長すれば、すぐに欧州へステップアップが望める魅力的なリーグです。しかも観客は熱狂的で、スタジアムで応援する圧力もすごいです。宗教かと見まがうほど、国民のサッカーに対しての情熱は本物です。

サッカー選手を育成する「ゆりかご」として、恵まれた環境といえます。

まとめ・アルゼンチンのエッセンスを取り入れよう!

アルゼンチンサッカーについて、日本にどのようなエッセンスを注入できるか、という視点でコラムを書きました。正直、協会のリーグ運営に関しては、日本のお手本にはなりません。

だからと言って、軽視してはいけません。

育成年代のサッカーについては、日本は、おおいに参考にすべきです。日本の特徴である、パスサッカーと組織的な守備。ここに欠けているピースは、相反する個人技重視のサッカースタイルです。しかし、個人技を磨くといっても、上手く取り入れなければ、どっちつかずとなり、弱体化します。

もし、アルゼンチンスタイルの細かいタッチのドリブル突破を覚えたら、日本のパスサッカーの幅は一気に広がります。ショートパス主体のサッカーに、密集地帯のドリブル突破が加わるからです。

実は、日本代表のサッカー選手に限れば、密集地帯を突破できるドリブル技術を持った選手は増えてきています。よい兆候といえます。

この勢いで、日本のサッカー文化に定着することを期待しています。