日本サッカーの強化策、監督のライセンス制度の見直し

コラム

まずは大喜利

司会:「私は『そうそう。』と返しますので、監督のライセンスについて、ボケてください。」

座布団1:「ガンバ大阪の監督ってカッコいいですよね。宮本ツネ様。」
司会:「そうそう。」
座布団1:「服装もハイセンスです。」
パチパチパチ~。

座布団2:「真夏日に、サッカー観戦していると、これが欲しくなります。」
司会:「そうそう。」
座布団2:「はい、扇子。」
パチパチパチ~。

座布団3:「今日は、試合に勝てる予感がします!」
司会:「そうそう。」
座布団3:「シックスセンスです!(第六感)」
パチパチパチ~。

大喜利していると、本題を忘れてしまう。あるあるです。
今回のコラムは『監督のライセンス制度の見直し』についてです。

Jリーグで監督を務めるには

日本のJリーグで監督を務めるには、日本サッカー協会で認定するS級コーチライセンスを保有していること、または、同等以上の資格を保有していること、が条件になります。

現在のライセンス制度の大きな問題点ですが、ライセンスの取得条件が厳しくて、監督を務められる人数が限られています。

日本サッカーを強くするには、優れた指揮官を増やさなければなりません。そのための、ライセンス制度の見直し、特にライセンス取得の緩和は、必須といってよいでしょう。

今回のコラムでは、ライセンス制度を通して、日本サッカーを強化していく枠組みについて、解説します。

監督に必要なのは、あくまでも才能

監督は、本来、誰でも挑戦できる職業です。どのカテゴリーでも、サッカー選手になるのに必要な資格はありません。しかし、プロの選手になるのは、選手としての才能が必要です。同様に、プロの監督に必要な能力は、監督としての才能です。

サッカーの世界では、選手としての才能と、監督としての才能は別物とハッキリしています。なので、選手時代に活躍していても、監督としてイマイチという場合もありますし、逆に選手時代は無名でも、監督としては優秀という場合もあります。もちろん、選手としても、監督としても一流の人もいます。

大事なのは、まず、試してみなければわかりません。
チーム率いてみて、初めて才能の良し悪しが判明します。

現行のライセンス制度の問題点、それはズバリ!
資格を与えないことで、才能の取りこぼしを助長していることです。

監督の水準を上げるには、まず、母数を増やす必要がある

有資格者が2倍に増えたら、中位争いの監督は最下位争いをします。

現在、S級コーチライセンスの有資格者は、およそ500人です。もし、S級の人数を2倍に増やしたら、監督に求められる才能は高い水準を要求されます。有資格者の母数500人のときに、リーグで中位ぐらいの監督の才能では、母数が2倍の1000人に増えると、降格争いをする監督の才能の水準になるからです。

数字をあげて、具体例を示します。

母数500人のトップ10%は、50人です。ちょうど、現在のJリーグの監督の席数ぐらいです。仮定の話として、このトップ10%の50人が全員監督で、ランダムで各クラブに在籍しているとします。リーグで中位争いをしている監督であれば、才能としては、500人中、上から25番目の水準なので、才能としては非常に優秀ですが、監督の席数は50人なので、中位争いになります。

もし、有資格者の母数が2倍に増えたとします。すると、同じ監督であっても、50番目ぐらいの才能になってしまいます。上から50番目の才能では、降格争いは避けられないでしょう。なぜなら、監督50人の中で、50番目の才能なのですから。

有資格者を増やしても、検証する場が無ければ意味がない

基本的に、有資格者の母数を増やすほど、監督の質は向上します。例外もあります。監督の席数は、限りがあるので、有資格者をやみくもに増やしても、才能の検証をする場が足りなくなることです。

J1は18チーム、J2は22チーム。計40チームで、この下にJ3が続きます。新規の監督の才能を検証するには、J3以下をどれだけ充実させれるか、にかかっています。本気で改革するつもりなら、J3は少なくとも40チームは必要になります。そればかりか、今は存在しないJ4を創設して、80チームぐらいは確保したいところです。J4はプロアマ混合でもよいですが、Jリーグという組織の直下の下部リーグにしなければなりません。

選手と同様に、監督が下位リーグから、ステップアップできる環境を構築する必要があるからです。

今の日本で例えます。アマチュアの街クラブや、大学のサッカー部などの監督をしていて、幾ら優秀な成績を収めていても、国内最高峰のリーグである、J1の監督に抜擢されることは無いです。ライセンス制度以前の問題で、評価の対象になっていないからです。

海外への進出

下部リーグに所属するクラブチームを増やすのは、至上命題としても、すぐに増やすのは現実的ではありません。日本人監督の総数を増やすには、海外リーグへの派遣も検討すべきです。

ただし、海外リーグへの進出には壁があります。ライセンスの互換性の問題です。アジア地域であれば、問題はありません。ですが、欧州に進出しようと思っても、ライセンスに互換性が無いため、欧州で1からライセンスを取得しなければなりません。日本のライセンス取得にも時間がかかるのに、欧州でも最初からとなると、時間ばかりが経過してしまい、ライセンスを取得する頃には、年齢的に欧州での実績の無しでは、需要も無いという状態に陥ります。

逆に欧州でライセンスを取得すると、日本でも使えます。いわば上位互換です。これは不平等でもあります。世界中の監督の席数は決まっています。とある地域は、フリーパスで全ての地域で通用する。一部の地域は、制限があって進出はできない。現在のアジア地域は、この制限のある地域に属しています。

現時点では、アジア進出が鍵

不平等を解消するには、時間がかかります。現在の環境で、最適を探るのも必要です。ひとまず、アジア地域の進出には問題ありません。幸いなことに、日本のJリーグはアジア地域では、最高峰のリーグと言えます。受け入れる側も、比較的、受け入れやすいです。日本代表のパスサッカーは、アジア地域では抜き出ています。日本流のパスサッカーを指導できる、と売り込めば、雇ってもらえる可能性もあります。

もちろん、現地での言葉の問題もありますが、日本人監督を輸出できるようになれば、S級コーチライセンスの有資格者を増やすことにもつながります。

まとめ、ステップアップの道筋

現行のS級コーチライセンス制度の大きな問題点は、監督として、スタートラインに立たせてもらえない点です。監督の才能の有無は、試さなければ評価できません。

監督の席数に限りがあるので、有資格者の人数を絞っているのが現状です。これでは本末転倒です。才能の取りこぼしが無いとは、とても言えないからです。かといって、やみくもに人数を増やしては、逆効果という問題を含んでいます。

遠回りですが、監督のライセンス制度の問題点を解決するには、リーグのピラミッド構造をいかに充実させるかに係わっています。

国内の5部や6部に在籍している監督が、成績次第で上位リーグにスムーズにステップアップできるか、どうか。もっと言ってしまえば、5部や6部の監督やコーチに、S級コーチライセンスの資格を与えているか、を問います。

資格を与えていなければ、ステップアップにタイムラグが生じます。活躍していたら、すぐに引き上げて、上位カテゴリーで検証できないからです。順に1つづつカテゴリーを上げるのではなく、飛び級で一気にジャンプアップできる環境を構築しましょう。

ここを整備しなければ、いつまで経っても、ライセンス制度の問題は解決せず、監督の才能の取りこぼしは続きます。日本のサッカーを強化するために、避けては通れない問題です。日本人監督の水準を引き上げるためにも、ライセンス制度の緩和は必要不可欠です。