満を持して紹介(?)です。
東京オリンピック世代の中山 雄太(なかやま ゆうた) 選手のコラムです。
2020年10月、史上初の海外組のみで編成した日本代表。カメルーン、コートジボアールとアフリカ大陸の強豪チームとの2連戦。しかも、舞台はヨーロッパということもあって、双方のコンディションも良くて、実りある試合となりました。
2試合で評価を最も上げた選手といえば、DF冨安健洋です。元々評価は高かったのですが、盤石どころか今後(おそらく10年近く)は、DF冨安を軸にして、日本代表の守備陣を構築していくでしょう。なにせ、もうすぐ22才とはいえ、現時点でまだ21才の若者です。伸びしろを加味すれば、末恐ろしいほど頼もしいです。
しかーし、今回のコラムの主役は『中山 雄太』選手です。
実は今回のコラムを執筆するにあたり、試合の採点や有識者の視点、インタビュー等、情報が出揃うまで待ちました。網羅したとは言い過ぎですが、かなりの量をカバーしたと自負しています。
だからこそ断言します。
「今、『中山雄太』の秘密に迫らなくて、いつ迫るのか!」と。
今回の欧州遠征において、日本代表の序列争いで、大きな変化があったのは中山雄太です。カメルーン戦はボランチでスタメン出場。コートジボアール戦は左SBでスタメン出場です。元々ポリバレントなタイプの選手ではあるのですが、森保監督はA代表で複数ポジションで起用してチェックしました。この意味は大きいです。指揮官の信頼を感じさせます。
オリンピック代表ということで、年齢的な伸びしろもある時期です。A代表で自信をつけて一気に伸びることも、あるあるパターンの1つです。(全員がそうなるわけではありません)
サッカーファン界隈では、以前から注目されていたのですが、詳しく知らない方もまだまだ多いと思います。今回のコラムでは、MF中山雄太について掘り下げていきます。
中山 雄太(なかやま ゆうた) 1997年2月16日生まれ (23才)
東京オリンピック世代のキャプテンマークを巻いています。ポジションはボランチですが、センターバックの印象が強い人も多いかも知れません。Jリーグ在籍中の柏レイソルでは、センターバックを務めていました。アンダー代表でもセンターバックを担っていたことがあります。
選手としての特徴です。まず身体的に恵まれています。『181cm・76kg・左利き』です。特に180cm超えの左利きというのは、アドバンテージです。左利きだと、ボールの持ち方が違いますから、監督によっては重要視する項目ではあります。純粋なセンターバックとしては、そこまで大きくありませんが、ボランチやサイドバックとなると、日本人選手としては大型の区分けに入ります。
キャプテンシーも大きな魅力です。プレースタイルについては、良い記事があったので紹介します。
https://khgmsrn.com/?p=3878
(2019/12/9 4000文字)
柏レイソルのサポーターであれば、プレースタイルは良く知っていると思いますが、選手というのは日進月歩です。特に海外リーグへ行くと、良い意味でプレースタイルの化ける選手がいます。日本代表のキャプテンだった長谷部選手が良い例です。キャリア晩年にドイツ1部で、リベロで活躍するとか、本当にすごいです。心を整える範囲が広すぎ!
Jリーグ時代の中山雄太
柏レイソルに在籍していました。ポジションは主にセンターバックで、2017年にJリーグベストヤングプレーヤー賞を受賞しています。しかし、当時から本人はボランチというポジションにこだわりを持っていました。当時の様子を知る、良い記事があったので紹介します。
中山雄太:
「ぼくは元々、中盤の選手だという自覚があって、練習でCBをやっているときも、自分が中盤にいたらと意識して取り組んでいました。それがいま、上手く整理されてきた手応えがある。」
「ぼくは点を取れるボランチを意識していますが、いつもたくさんの選択肢を持ち、その中からベストの選択をすることを心がけています」柏J2降格も中山雄太の才は必見だ。CBもできて、点を取れるボランチ。
https://number.bunshun.jp/articles/-/832735
(Number Web 熊崎敬 2000文字)
海外リーグへ移籍した中山雄太
2019年1月、オランダ1部のPECズヴォレへの完全移籍。オランダの外国人枠は、現地の選手よりも年俸を高くするルール規定になっています。年俸が高くなるぶん、当然のごとく実力も求められます。(より正確に言うと、チームで活躍して売却益を上げられる選手を求めています。)
移籍時の中山雄太も、大きな期待を寄せられました。下記の記事は現地メディアの様子です。
「ズヴォレは1年以上にわたりナカヤマを追いかけてきた。U-20日本代表のキャプテンを務めた彼は、フローニンゲンのリツ・ドウアンとともにU-20ワールドカップで活躍した。2017年には日本最高峰のリーグの最高の若手選手に贈られるJリーグベストヤングプレーヤー賞を獲得した。これがズヴォレがEU圏外の同選手に投資したいと考えた理由だ。」
蘭メディアがズヴォレ加入の中山雄太を特集
https://web.gekisaka.jp/news/detail/?264260-264260-fl
(ゲキサカ 700文字)
移籍後は、色々と苦労があるのですが、順に追っていくと、興味深い真実に気づきます。中山選手は、どのチームへいってもボランチ・サイドバック・センターバックと、複数ポジションで起用されています。本人がボランチで勝負したいと考えていても、周囲が色々と試したくなる選手かも知れません。もちろん、チーム事情や、シンプルにポリバレントな能力を買われている部分もあるでしょう。
スタメンを確保できない時期もあったのですが、代表選手としての転機があったとしたら、コパ・アメリカ参加と、その後のアンダー代表の試合になります。
中山雄太vsU-22ブラジル代表
2019年6月、コパ・アメリカの初戦、チリ戦。MF中山はボランチでスタメン出場するものの、チームは4失点で負けます。初のA代表キャップとなりましたが、その後の2試合、ウルグアイ戦とエクアドル戦はベンチでした。残念ながら、チームはグループリーグで敗退。短期決戦ですから、そのときのコンディションの良し悪しもあったかと思いますが、胸に期するものはあったはずです。
雪辱、というわけではありませんが、数か月後に次の機会が訪れます。
2019年10月、U-22ブラジル代表と、敵地ブラジルで親善試合を行います。サッカーファンの間では、大きな話題となりました。アウェーブラジルの地で、日本のアンダー代表が勝利。しかも試合内容で、相手を上回るという快挙です。審判もブラジル寄りで、PKを与えるだけにとどまらず、1人退場している中、3-2での勝利です。
ブラジルからすれば、擁護できない敗戦でした。で、この試合の3点目のゴールを決めたのが、MF中山です。見事なゴールでした。ネット上にタッチ集があったので掲載しておきます。キャプテンマークを巻いているので、映像で本人を見分けるのは容易です。
併せて、上記の試合のインタビュー記事を紹介します。
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jfootball/2019/10/17/___split_97/index.php
(web Sportiva 飯尾篤史 2000文字)
書き出しの一文が詩的な表現でカッコいいのですが、中山雄太に焦点を合わせたインタビュー記事です。ファン必見です。
再びA代表のチャンス到来、所属チームでの活躍
A代表の招集直前、所属チームでゴールを決めてマン・オブ・ザ・マッチに選ばれました。その試合の監督のコメントが印象深いです。
ヨン・ステーヘマン監督
地元紙が特集
https://news.livedoor.com/article/detail/18969143/
(フットボールチャンネル 800文字)
このコメントの何が、興味深いかです。
ボランチとして勝負をしたい!
その想いが、異国の地で監督まで伝わっています。
何を大袈裟な、なんて言わないでください。海外では主張しなければダメだ、と言いますが、監督に主張したがゆえに干されることもあります。ネイティブ並みに意思疎通できるわけではありませんから、誤解が発生することは、よくある話です。
この件に関して、最後に興味深い記事を2つ紹介して、コラムを終えたいと思います。(大げさに言えば、中山雄太の秘密(?)に迫れます。)1つ目の記事は、まるで決意表明のような内容です。
中山雄太:
「『ボランチの選手だ』と言い続けてきた。最初はダイレクトには伝わっていなかったと思う。だからこそ、口ではなくプレーで証明するという思いが強くなった。現実に影響したかは分からないけど、それが実って、やっとスタートラインに立てた感覚。ボランチでやるという面では、ここからがスタート」。中山雄太、オランダ3季目と東京五輪への覚悟
https://www.nikkansports.com/soccer/japan/news/202009110000636.html
(2020年9月12日 日刊スポーツ 1200文字 杉山理紗)
しかし、中山選手は、今季の開幕戦の試合に出場しませんでした。
本当に、スタートラインに立たせてもらっているのか。日本から見守るファンとしては疑問も浮かんできます。ですが、すぐにチャンスは巡ってきました。ライバル選手の出場停止です。中山雄太は、ここ一発の集中力でゴールまで決めて、マン・オブ・ザ・マッチを獲得します。
2つ目の記事は、その試合後のインタビュー記事です。この記事に関しては、ぜひドキドキしながら読んで見てください。
ドキドキの要点を整理します。『ボランチの選手だ』と言い続け、結果的に開幕戦は未出場でした。もし元スタメンの選手が戻ってきたら、出場できるかは不透明です。今後もボランチにこだわるのか、ポリバレントを優先するのか。自分が、どういう選手としてキャリアを築いていくべきか、ときに葛藤しながらも、目の前の壁へと挑む、その瞬間を捉えた記事とも言えます。
https://news.yahoo.co.jp/byline/nakatatoru/20200928-00200535/
(2020年9月28日 3000字 中田徹)
しかも、この記事は、代表合流直前の記事なんですよね。このあとに日本代表で、2試合連続スタメンです。そして肝心のポジションは、ボランチと左サイドバック。
中山選手の背景を知ると、この事実に思わずニヤリとしてしまいます。
個人的な見解を掲載します。まだ東京五輪世代の選手です。どのような決断であれ、あなたを応援するファンがいます。あなたの心のあるがまま、自由にキャリアを歩んで欲しいと思います。言葉に縛られず、でも、決意を胸に! がんばれ、中山選手! ファイトー!