日本代表は歴代最強か?日韓戦の余波と、モンゴル戦

コラム

最初にタイトルの回答から。

Q.日本代表は歴代最強か?
A.ぶっちゃけ日本代表は、今後もっと強くなる!

理由は本コラムで解説します。

日韓戦とモンゴル戦について

3月末にA代表は、親善試合の韓国戦とW杯大陸予選のモンゴル戦がありました。合間オリンピック世代は、強豪アルゼンチン代表との2連戦です。久々に中身の濃い代表日程だったと思います。

親善試合の韓国戦は、本来はW杯大陸予選のミャンマー戦だったのですが、相手国側から延期の申し入れがあって受諾した形になっています。

延期理由は伏せられています。一応、表向きはコロナ禍という形になっていますが、実際のところミャンマー国内の政情不安でしょう。クーデター起きていますから、サッカーどころではありません。ブラジルのペレ、コートジボワールのドログバといった、サッカー選手の影響力で紛争を停戦させた奇跡もありますが、あくまでもレアケースです。

ミャンマー戦については、延期した日程もすでに発表されていますが、コロナ禍でW杯予選の日程が押していますので、2度目の延期は考え難いです。

韓国戦について

コロナ禍の影響で、欧州組は全員選出できたわけではないのですが、逆に国内組から多く呼べるということで、森保監督のメンバー選考に注目です。特筆する点として、U-24はアルゼンチン代表との2連戦があるので、A代表の場を借りて、オリンピックに向けて若手に経験を積ませるといった配慮も不要です。

そんな中、唯一、DF富安はオリンピック世代でA代表に招集されました。森保監督の意図は明確で、DF富安はA代表の主軸という位置づけになります。

JFA公式のメンバーリスト
http://www.jfa.jp/samuraiblue/worldcup_2022/2nd_q/20210330/member.html

GK
西川周作 浦和レッズ
権田修一 清水エスパルス
前川黛也 ヴィッセル神戸

DF
吉田麻也 サンプドリア/イタリア
佐々木翔 サンフレッチェ広島
松原健 横浜F・マリノス
山根視来 川崎フロンターレ
畠中槙之輔 横浜F・マリノス
中谷進之介 名古屋グランパス
小川諒也 FC東京
冨安健洋 ボローニャFC/イタリア

MF
稲垣祥 名古屋グランパス
江坂任 柏レイソル
遠藤航 VfBシュツットガルト/ドイツ
伊東純也 KRCヘンク/ベルギー
南野拓実 サウサンプトン/イングランド
古橋亨梧 ヴィッセル神戸
守田英正 CDサンタ・クララ/ポルトガル
川辺駿 サンフレッチェ広島
鎌田大地 アイントラハト・フランクフルト/ドイツ
坂元達裕 セレッソ大阪

FW
大迫勇也 ヴェルダー・ブレーメン/ドイツ
浅野拓磨 FKパルチザン・ベオグラード/セルビア

【補足】
MF原川力(セレッソ大阪)は怪我で不参加。代わりに、MF稲垣祥(名古屋グランパス)を招集しています。
http://www.jfa.jp/samuraiblue/news/00026524/

また、
MF坂元達裕(セレッソ大阪)は怪我で途中離脱。MF脇坂泰斗(川崎フロンターレ)が追加招集となっています。
http://www.jfa.jp/samuraiblue/news/00026537/

ポジション別に内訳を確認してみると、
GKは1枠:国内組のみで3名を招集。
DFは4枠:海外組2名・国内組6名の計8人。
MFは5枠:海外組5名・国内組5名の計10人。
FWは1枠:海外組2名のみ

となっています。昨年の欧州での4試合は海外組のみでメンバー編成しましたが、今回は海外組は9名のみで、過半数は国内組です。

次にスターティングメンバーの比率です。海外組8名、国内組3名。ただし、GK権田修一は昨年の欧州遠征のときは海外組として参加しています。今季から日本に戻ってきたばかりなので、国内組の比率はさらに下がります。そういった意味で、国内組でスタメンで出場できたのは、酒井宏樹などの有力選手が招集できなかったSBだけになります。

韓国の士気が低かったは、あり得ない!

日本代表の完勝です。3-0という結果以上に、試合内容で圧倒しています。日本のマスメディアで、韓国はどうしちゃったの?といった援護記事が出てしまうほどです。

一応、先に申し上げておくと、韓国側はベストメンバーではありませんでした。ですが、むしろ敗戦の傷が浅くなっただけで、言い訳できる理由が無い方が、韓国としては今後の糧になったでしょう。正直、第三者の視点で見れば、韓国側の選手が、数人ほど違ったとしても、とてもじゃないですが、前線のFWまでボールを繋げるような試合内容では無かったです。

前半は、完全にワンサイドゲーム。まさに日本の圧勝です。

後半、わずかに盛り返したといっても、親善試合特有のフレッシュな選手を大量投入しただけで、しかも、主導権は日本側が常に握る状態でした。後半は日本側も、初招集を含めて、代表経験の浅い選手達をかなり投入しています。

日本の国内記事で、韓国側の士気について指摘する記事がありましたが、ぶっちゃけ双方の選手に失礼です。韓国の選手が、日本代表を相手に、士気を高揚させないで試合をするなんて、あり得ません。

ジョーク(?)として、『日本を相手にしたらジャンケンでも負けてはいけない』とされる国です。実際、日本に敗戦したあと、韓国サッカー協会の会長は、公式ホームページで
謝罪文を掲載しています。たかが親善試合で負けただけなのに、国民に対して謝罪文です。

参考に謝罪文を掲載している記事があったので、リンクを張っておきます。
https://sportsseoulweb.jp/sports_topic/id=25878

真面目な話、日韓戦において、韓国側の選手に気迫が足りなかったとか、あり得ないです。

ではなぜ、韓国はあれほど弱かったのか。単純な事実として、日本代表が強かったになります。現在の日本代表の選手層は、アジアでは頭一つどころか、頭二つは抜けています。国内リーグの充実度、それに伴う欧州リーグへの進出率は、アジアで比肩する国がありません。現在の好循環を生み出しているのは、選手、クラブ、サポーター、そして協会関係者の方々の長年の努力の賜物です。本当にありがとうございます。

アジアでの真の敵は、笛だけ

今の日本代表にとって、アジアの試合で心配する点は、審判の笛ぐらいです。森保ジャパンは、アジアカップの決勝を落としていますが、あれも正直、審判が絡んでいないとは言えません。もちろん、決勝戦のカタールのゴールが見事だったのもありますが、日本側からすると、序盤からハイプレスを仕掛けられないという枷がありました。

なにせ、直前の試合(サウジアラビア戦)で、身体をぶつけただけで、ファールを取られた審判が決勝を裁いています。

この時の審判の件については、下記の記事でも参照してください。

せっかく決勝までたどり着いたのに、日本代表の選手達は、完全に様子見の状態で試合を開始しています。直前の試合で、正当なチャージしても全部ファールですから、怖すぎて、審判のジャッジ基準を掴まないと試合になりません。正直、アジアカップの決勝なのに、なんだかなぁという感じです。
(決勝の笛だけ、基準を元に戻されてもって感じです)

本音を言えば、試合に勝ってから批判したかったです。

イルマトフ主審は、長年のファンからすると、アジアの奇跡とも形容された名審判です。それだけに、サウジアラビア戦のジャッジは、正直ショックでした。

話を韓国戦に戻します。

勝って兜の緒を締める

近年の日韓戦において中盤のポゼッションは、日本側が優勢です。ザックジャパン時代の札幌ドームの試合では、韓国代表は監督の嗜好で、ポゼッションサッカーに傾倒して惨敗しています。当時の潮流として、ティキタカのバルセロナが全盛期の頃ですから、理想のサッカースタイルを目指すのは理解しますが、さすがに日本代表の得意とする土俵で、戦いを挑むのは無謀です。

今回の日韓戦も同様です。

韓国のパウロ・ベント監督は、明らかに日本について見誤っていた点があります。試合前の会見で「(日本は)高いクオリティでカウンターをしてくる。」と発言しています。そして、試合では、ゼロトップを採用した韓国ですが、元々韓国側の強みは、当たりの強さと縦へのカウンターの速さです。
韓国の伝統的なサッカースタイルは、日本の中盤のパスワークを分断、または、中盤の攻防をすっ飛ばすことで、日本代表のストロングポイントを消してきました。
ある意味、そこに強みがあったのですが、日本代表のサッカースタイルを甘く見ていた、韓国側指揮官のミスです。

そもそも、日韓の両国が、まともに正面からぶつかると、日本側がショートパスで中盤をつなぐのに対し、韓国側は鋭いカウンターを繰り出す展開になりがちです。わかり易くいえば、ゼロトップを採用するなら、サッカースタイル的には、むしろ日本側です。

中盤の攻防で日本側が圧倒していたので、表面まで出てない問題点もあるのですが、もし韓国が中盤でボールカットしても、ゼロトップだと、素早く最前線にボールが入りません。もちろん監督としては全体の押し上げを期待しての采配でしょうが、結果的には自滅です。押し上げるも何も、日本の圧力が強くて中盤でボールを全て刈られていましたから、自ら攻撃手段を失っているようなものです。カウンターにすら、なっていません。

日本側のプレスの質を褒めるべきです。しかし、あまりにもワンサイドゲームになったので韓国側の戦術ミスも隠れてしまいました。もし、韓国代表のメンバーが全員招集できて、多少マシになったとしても、指揮官の頭の中で、日本がポゼッションする側だという認識が無ければ、ゲームプラン自体が無意味です。どっちにしろ日本が有利に戦っていたでしょう。

相手側の指揮官に油断があったとは言いませんが、もし、W杯最終予選で同じグループに組み分けされたら、今回の試合で認識を改めて、対策してくるでしょう。フルメンバーだと前線のFWにタレントがいますから、ゴール前を固めてきたら、かなり戦い難い相手です。(プライドを捨てて守備固めに専念できたらですが)

ただ、今回の試合結果や内容については、相手指揮官のミスだけではないです。単純に、選手個々のクオリティで、日本側の圧勝です。ピッチ上のあらゆる局面で、ほぼ全て完勝です。相手からすれば、ごく稀にあるカウンターの機会を伺うぐらいしか、手段が残されていません。さすがに韓国側のサッカー関係者が、意気消沈したのも当然です。試合内容以上に、両国の差が浮き彫りになりました。

日韓の明暗

元日本代表・城彰二のサッカーコラムに対する、韓国サポーターの反応です。メディアを通してのコラムなので、韓国側に配慮しながらの内容となっています。

改めて強調しますが、韓国が弱くなったのではなく、日本が強くなりました。確かにフルメンバーの韓国代表ではありません。ですが、あのメンツでもアジアでは、十二分に強豪国です。試合結果は3-0ですが、試合をちゃんと見てたら、韓国のGKが活躍して、3失点に抑えただけです。もっと一方的な得点差になっても不思議ではありません。アジア大陸で、この試合の韓国代表のメンバーに対して、これほど圧倒できるチームが居るか?と問われると、おそらく居ません。

特に強調しておきたいのは、たまたま才能のある選手達が揃った世代だから、日本が強くなったわけではありません。全体の実力が底上げされて、層の厚みとして日本代表も強くなりました。

最大の要因は、Jリーグの充実です。1993年にJリーグが開幕して、もうすぐ30年の節目を迎えます。日本人の素晴らしい特徴でもありますが、コツコツと地道に努力して、海外の良いところを吸収して、いつしか日本の新しいスタイルとして、花を咲かせる文化があります。

Jリーグから海外トップリーグを目指し、いずれ指導者として経験を還元する。良い意味で循環サイクルが成り立ち始めています。ここからは上昇するだけです。日本はここからドンドン強くなっていくのかな、と。

モンゴル戦について

14-0と大勝しました。結果も内容も圧勝していますが、モンゴルについて言えることがあるとすれば、モンゴル側は日本戦に合わせて、キッチリ準備していた印象があります。

正直、韓国よりも意図の見えるサッカーをしていました。囲まれる前に、はたいて、素早く前線にボールを出して、勝負です。格上の日本を相手に、オープンな戦いを挑んだのは、好印象です。

もちろん、試合を開始する前から、モンゴルはすでに予選敗退が決まっているので、ゴール前を固める戦術を取る意味は無いのですが、それでも、試合終盤までオープンな戦いを挑み続けるというのは、難しいミッションだったと思います。

元々、実力差はハッキリしていました。その上、親善試合とはいえ、日韓戦のすぐあとです。日本代表はチームとして高いインテンシティを発揮して、終盤まで集中力を切らせませんでした。終了間際のアディショナルタイムの3分間で、3得点です。

この試合の注目点は、国内のJリーグ組の活躍です。

間近に迫った東京オリンピックですが、誰をOA枠に抜擢するかは不透明です。オリンピックはFIFA主催ではないため、選手の強制招集権がありません。オリンピック世代ですら海外クラブ所属の選手は、クラブ側の許可が必要です。

その点、Jリーグの各クラブに所属する選手は確実に呼べます。OA枠はA代表のレギュラークラスを招集できれば、それに越したことはありません。ただし海外クラブは直前で前言撤回して、選手の派遣を拒否した事例もあります。海外組は100%の保障が出来ないため、万が一を考慮して、国内の選手も当然検討しているはずです。

森保監督は、U-24の監督も兼任しています。

もし、OA枠が国内の選手に限られたとしたら、の視点で試合を見ると、今回の韓国戦とモンゴル戦はかなり興味深いものになります。

幸い、どのポジションの選手も大活躍です。オリンピック世代の状況を見ながら、柔軟に対応できそうです。

追記
オリンピック代表のグループリーグ分けがありました。日本はフランス、メキシコ、南アフリカと同組です。会見で森保監督は「(OA枠は)A代表のコアなメンバーから招集する」と明言しています。期待が膨らみます。